
社会的背景/YKK APの目指す姿
社会的背景
国際連合の「世界人口白書2021」によれば、世界の総人口は2021年時点で約78億7500万人とされており、2050年には約97億3,000万人に増加するという予想があります。
また国連世界水開発報告書2023によると水の使用量は過去40年間で世界的に年間約1%ずつ増加しており、人口増加と社会経済的発展の組み合わせにより、2050年まで同様の割合で増加すると予想されています。
上記のような背景を受け2050年には、深刻な水不足に見舞われる人口は、39億人(世界人口の40%以上)となる可能性もあると予想されています。
こういった中、SDGs目標6の達成のため企業においても取水量の削減や汚染の防止などを行い安全な水資源の持続可能な利用が求められています。
YKK APの目指す姿
YKK APの事業活動の中でも水を使用しています。水を重要な資源と考え地域と共に持続可能な利用を目指していきます。
事業活動と水の関わり
YKK APでは主に生産工程において、洗浄水や冷却水として水の利用があります。地域によって規制や制限が異なりますが、取水については循環利用の推進による削減、排水についてはより厳しい自主管理基準を用いて汚染の防止に努めています。

環境長期ビジョン
YKK APでは、取水の削減、排水の負荷低減を行い、地域と共生しながら持続的な水利用の実現に向けて取り組んでいきます。
YKK APにおけるリスクと機会
短期 | 長期 | |
---|---|---|
リスク | 工場からの異常排水の排出による周辺地域の汚染 使用量の増加による渇水、地盤沈下 |
汚染による継続利用の不可、周辺環境や生態系への影響 |
機会 | 水リスクへの対応による地域生態系の維持、保全 継続的な水資源の活用 |
周辺地域のみならず地球環境負荷低減、事業活動の継続 |
2024年度の総括と今後の展開
2024年度の取り組みと課題
事業活動における水使用量の削減の取り組みとして、洗浄水の多段利用(使用後の水を他用途に活用)、冷却水の循環利用またムダの削減による使用量見直しを中心に活動を行っています。2024年度も滑川製造所において水循環の冷却ユニットが本格稼働し、再利用化が進みました。また、埼玉工場ではYKK APでは初となる雨水を活用したトイレを設置しております。

滑川製造所で導入した冷却ユニット

埼玉工場と雨水利用の概念図

拠点ごとの取水に関わるリスクの有無や水のリサイクルによる循環使用の状況、排水の自主管理基準の強化等進めており、2024年度も継続してリスクが高くなる可能性のある海外の主要製造拠点においてYKKグループ独自の水リスクチェックシートを用いてリスクの把握を行いました。YKK APの製造拠点の多くは水ストレスの比較的低いエリアで活動しており直ちに脅威となるリスクは確認できませんでしたが、今後もチェックシートの内容を見直しながら水リスクに対応していく予定です。
外部からの評価として、2024年8月に創設された、水循環に資する取り組みに関心のある企業や取り組みを実施している企業を積極的に登録・認証する制度である「水循環企業登録・認証制度」にて、YKK APが「水循環ACTIVE企業」に認証されました。YKK APは水量や水質など直接的に水循環に貢献する「水量水質」と、人材や資金、機械などを介して間接的に水循環に貢献する「人材資金」の両カテゴリーで認証を取得しました。

モノづくり
目標の達成状況
水使用量の削減については、当初計画より削減が進んだこともあり中期計画の前倒しでの達成を目標し、2024年度は使用量で2013年度比35%、原単位で55%の削減を目指しました。取り組み実績としては、工業用水の受け入れ量の見直しや洗浄水の多段利用、配管更新による漏洩対策などを実施し、結果として使用量で35%、原単位で54%の削減となり計画を達成しました。
【評価】○:達成、△:一部未達、✕:大幅未達
※表の見切れている部分は横にスライドしてご覧になれます。テーマ | 基準年度 | 2024年度実績 | 2025年度目標 | 2028年度目標 |
---|---|---|---|---|
水リスク評価 | ー | 水リスク 評価実施 リスク低減 |
水リスク 評価実施 リスク低減 |
水リスク 評価実施 リスク低減 |
水使用量の削減 | 2013年度 | ○ 2013年度比 ・使用量 35%削減 ・原単位 54%削減 |
2013年度比 ・使用量 37%削減 ・原単位 56%削減 |
2013年度比 ・使用量 40%削減 ・原単位 66%削減 |
水使用量の推移 YKK APグループ(国内・海外製造拠点)

※21年度より取水量の計測方法を見直しており昨年度までの数量と差異があります。
汚染の予防について(水質)
YKK APでは製造からの排水に関して、これまでの分析結果より統計的に算出したより厳しい自主管理基準を設定しております。また、水門などの機器に関しても緊急時の訓練や定期の点検で動作確認を行い汚染の防止に努めております。詳細なデータについては「<サステナビリティデータブック>水中排出汚染物質 総重量」に記載してあります。
水リスク評価
YKKグループでは独自の水リスクチェックシートを用いて評価していますが、取水リスクについてはWorld Resorce Institute(世界資源研究所)が提供するAqueduct4.0(2023年公開)を用いて水ストレスについて評価を行いました。水ストレスは1人当たりの年間使用可能水量を5段階(1.低い~5.極めて高い)で評価しております。YKK APでは4つの拠点(中国、インド、インドネシア、カナダ)でリスクの高い地域となっていました。また、ランク別に水使用量を比較するとリスクの高いまたは極めて高い地域での水使用量は全体の2.5%となりました。これは前年比で11,000m3の削減となり、全体に占める割合も-0.1%となりました。
今後もリスクについては継続的に把握し、優先的に削減を進めていきます。
水ストレス別水使用割合
2024年度 YKK APグループ(国内・海外製造拠点)実績 8.1百万m3

拠点 | 水使用量(m3) | 水ストレス※ | |||
---|---|---|---|---|---|
2021 | 2022 | 2023 | 2024 | Aqueduct4.0 | |
エリーAP社 | ー | 2,840 | 2,399 | 5 | |
YKK AP大連社 | 12,114 | 11,270 | 12,861 | 12,368 | 5 |
YKK AP蘇州社 | 124,770 | 142,156 | 104,380 | 108,759 | 5 |
YKK APインドネシア社 | 54,117 | 71,960 | 81,417 | 77,921 | 4 |
ボルーカ社 | 9,238 | 13,135 | 11,226 | 13,573 | 4 |
※水ストレス:1.低い~5.極めて高い
取水元、排水先について
取水源別のデータでは約63%が市町村等公共機関からの外部購入で、37%が敷地内からの地下水の利用となりました。排水先は多くが海や河川といった公共水域となっております。
取水源の内訳
2024年度 YKK APグループ(国内・海外製造拠点)実績

排水先の内訳
2024年度 YKK APグループ(国内・海外製造拠点)実績

今後の取り組み
2025年度以降もKPIとして水使用量の削減を目標に掲げ取り組みを進めます。また。水リスク評価の継続、排水負荷低減に取り組みを継続し、地域の特性や規制、課題にあわせた取り組みを実施していきます。
テーマ | 活動内容 |
---|---|
水リスクへの対応 | 製造拠点における水リスクの定期的な評価の継続 |
水使用量の削減 | 節水、リサイクルの推進、技術調査 |
排水負荷低減 | 自主管理基準の継続的な見直しと監視体制強化 |