築20年の大規模賃貸マンションをZEHレベルに改修
ZEHのウェルビーイングな効果を科学的に実証
2050年カーボンニュートラルの実現を見据え、住宅の省エネ化の更なる推進が求められる中、築20年の賃貸マンションの1室をZEH(※1)水準の住戸へ改修し、住む人に与えるウェルビーイングな効果を科学的に実証する試みが東京建物、YKK AP、慶應義塾大学の産学連携プロジェクトとして2025年8月・9月、2026年1月・2月に行われました。YKK APは、高断熱窓への改修、室内環境計測、温熱環境シミュレーションを担当。ZEHの効果として省エネルギー化に加え、温熱環境の改善により、快適性や健康性の向上につながる可能性が示されました。
日本が目指す2050年カーボンニュートラルと住宅分野
日本では、2050年までにカーボンニュートラルを実現する目標が掲げられています。この目標に向けて、CO2等排出量の約4割を占めるとされる住宅・建築物分野では、2030年以降新築される住宅において、現行のZEH水準以上の省エネ性能が確保されていることを目指しています。
現在、新築住宅と比較して、既存住宅のZEH化はまだまだ進んでおらず、ZEHの認知度向上や、メリットに対する理解が十分に進んでいないことも課題となっています。(※2)
そのため、ZEHの効果を訴求するために、東京建物、YKK AP、慶應義塾大学は、既存住宅においてZEH水準への改修を行い、省エネルギー性の検証に加え、住む人の快適性、健康性に与える影響を科学的に検証することを目的とした実証実験を実施しました。
<参考>関連ニュースリリース:https://www.ykkapglobal.com/ja/newsroom/releases/20250917
結果報告会の様子
(左から)YKK AP ビル統括本部 開発営業統括部長 大作健司、東京建物 執行役員 住宅エンジニアリング部長 遠藤崇氏、慶應義塾大学 理工学部 システムデザイン工学科 准教授 川久保俊氏、国土交通省 住宅局参事官(建築企画担当)付 建築環境推進官 宮森剛氏
築20年の物件を活用した希少な実証実験
今回の実証実験では、東京建物が開発し保有する、築20年の大規模賃貸マンション「Brillia ist 東雲キャナルコート」において、同じ方位・同じ間取りの2つの住戸を用意し、「ZEH Oriented」の水準を満たす改修を行った住戸と、通常の改修を行った住戸で性能を比較しました。ZEH水準に改修した住戸は、断熱性能の高い窓(アルミ樹脂複合窓+Low-E複層ガラス)や断熱材への交換等によって住戸の断熱性能が強化されました。
また、実証実験は、測定機器を使って室内環境を計測する期間と、実際に被験者が居住して快適性や健康性を検証する期間に分けて実施されました。(※3)
省エネだけじゃない、ZEHの効果
実証実験では、夏季・冬季の室内環境や冷暖房時の消費電力などを測定し、その結果、ZEH改修住戸の方が通常住戸と比べ電力消費を抑えられ、室温の変動が少ないことが確認されました。
加えて、開口部に対して、サーモグラフィー画像による温熱環境評価が行われました。結果、ZEH改修住戸では、夏季は日射熱が低減され、冬季はガラス面の温度低下の抑制が観測できました。さらに、冬季では、コールドドラフトと呼ばれる、窓近傍から冷たい空気が吹き下ろす現象も発生しづらいことを確認しました。このことから、ZEH改修住戸に設置した高い断熱性を持つ窓は、室温の変動をゆるやかにし、住戸の快適性の向上に大きく貢献していると考えられます。
開口部の断熱・遮熱効果(サーモグラフィー画像による温熱環境評価)
今回の実証実験では、睡眠効率や作業課題の成績も測定し、ZEH改修住戸は睡眠効率が良く、その結果として、作業課題の成績が向上することも示されました。室内の温度差が生じにくいZEH改修住戸の室内環境が、住み心地に関係していると示唆されました。
既存住宅を活用した実証実験で確かめるZEHのウェルビーイングな効果
2050年カーボンニュートラルの実現を見据え、既存住宅のZEH化が求められるなか、そのメリットを可視化するため、実証実験を実施しました。これまでZEHは、省エネや光熱費削減といった観点で語られることが多くありました。一方、今回の実証では、住む人の快適性や健康性、睡眠効率、作業課題の成績などのウェルビーイングな効果を検証しました。住まいの価値は経済性だけで決まるものではなく、住む人の心身が健やかで、過ごす時間が豊かであることも重要だと私たちは考えています。
開口部で日本の住宅のZEH化に貢献。既存住宅の断熱改修でカーボンニュートラル実現へ
<ビル統括本部 開発営業統括部長 大作 健司のコメント>
カーボンニュートラル実現に向け既存住宅の省エネ化を推進するためには、窓の断熱改修は重要な鍵を握っています。しかし、現在、既存マンションにおける窓の断熱改修はまだ普及が進んでいないのが現状です。
そこでこの度、東京建物・慶應義塾大学との共同実証実験に参画し、熱の流出入が最も大きい窓を断熱改修することで、住まいにどのような変化をもたらすかを「科学的」に証明することを目指しました。実験で得られた睡眠や作業効率の向上というウェルビーイングな効果は、高断熱化が単なる省エネだけでなく住む人の健康と豊かな暮らしに直結することを裏付ける結果であると考えています。
まずは、今回の貴重な実証データを活用し、多くの方にZEH水準の住まいの快適性や健康に与える影響を知っていただく活動をしていきます。そして、ZEH、ZEH-Mの普及に取り組み、住む人のウェルビーイング向上と、2050年
カーボンニュートラルの実現に貢献していきます。
※1:ZEH(Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略称)は、外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギー等を導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支を正味でゼロとすることを目指した住宅。
また、ZEH-M(ゼッチ・マンション)はマンションや集合住宅の住棟または住宅用途部分をZEH化したもの。
※2:経済産業省「第6次エネルギー基本計画」「第7次エネルギー基本計画」
※3:実証実験の日程
・ 室内環境計測(夏季:2025年8月18日~8月22日/冬季:2026年1月26日~2月6日)
・ 被験者入居計測(夏季:2025年8月25日~8月30日、9月1日~9月6日/冬季:2026年2月9日~2月14日、2月16日~2月21日)
実証実験に携わったメンバー
(左から)ビル統括本部 ビル商品企画部 販売推進室 東谷 昇和
開発営業統括部 パブリックエクステリア推進部 第一開発営業部長 吉田 慎也
商品開発本部 価値検証センター 技術解析室 石橋 健太郎
実環境品質推進室長 猪原 雄高
実環境品質推進室長 西谷 考広
大作 健司(だいさく けんじ)
1996年入社。ビル建材本部部門にて勤務後、現在のビル建材第一本部にて総合建設会社営業担当として東京・名古屋で17年勤務。その後、名古屋支店長を経て、2023年度から現職にてビル事業における先行営業(施主・設計事務所)部門の全体総括を担う。
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