パナソニック ハウジングソリューションズ社長 山田 昌司 氏 × YKK AP社長 魚津 彰 対談
―― 建築資材・住宅設備市場のリーディングカンパニーへ

パナソニック ハウジングソリューションズ社長の山田 昌司氏とYKK AP社長の魚津 彰が対談。PHSのYKKグループ入りの経緯や両社の商材を掛け合わせたシナジーの創出について語り合いました。

山田 昌司 氏

パナソニック ハウジングソリューションズ
代表取締役 社長執行役員

1983年松下電工入社。パナソニック電工 執行役員、パナソニック 役員、常務執行役員などを経て、2022年4月よりパナソニック ハウジングソリューションズ 代表取締役 社長執行役員。2026年6月よりYKK AP取締役を兼務。

魚津 彰

YKK AP
代表取締役社長

1985年YKK AP入社。入社以来、建材営業を担当。執行役員 営業本部 窓事業企画部長、住宅本部長、営業本部長、取締役 副社長 海外担当を経て、2023年4月より現職。

企業に浸透する理念も一致
互いにないものを補完し合えるパートナー

――パナソニックグループの住設機器・建材事業を担うパナソニック ハウジングソリューションズ社(PHS)がYKKグループに加わった経緯を教えてください。

山田氏

PHSはパナソニックグループが持株会社制へと移行した2022年、独立事業会社として発足しました。日本国内の新設住宅着工戸数が漸減する中、「非住宅」「リフォーム」「海外」の3つの市場を戦略領域に据え、他社との協業や共創も探りつつ、経営を進めてきました。ただ、この数年、パナソニック ホールディングス(PHD)がソリューション領域に注力することが明確となり、PHSは重要な投資対象になり得ないことが明確になってきました。持続的成長を実現するにはよりスピーディーに投資を含む意思決定を下せる環境を自ら選び取り、進んでいくべきだと考えるようになっていました。

そこで浮上したのが、以前より縁のあったYKKグループです。実はPHS前身の松下電工時代、2002年にYKKとの間で、商品の共同開発を軸とする戦略的業務提携「MYコラボ」を結んだことがあります。YKK創業者・吉田忠雄氏が事業活動の基本とした企業精神「善の巡環」は、パナソニックが掲げる「産業報国の精神」や「事業活動を通じた社会の発展への貢献」などと一致する理念でもあり、YKKグループは我々にとって非常に親和性の高い存在でした。

2024年10月に、私の方からYKK APに「何か一緒にやりましょう」と提案し、連携の検討を始めました。PHSの戦略領域である、「非住宅」「リフォーム」「海外」の各市場を拡大するには、重複する事業がほとんどなく、商品領域も販路も広げられるYKK APと組むのが最良の選択だと確信したのです。そして2024年11月、PHD楠見雄規社長とともに、YKK、YKK APの両会長を訪ね、株式譲渡の提案をさせていただきました。

魚津

Panasonicブランドを背負う企業との協業という大変大きなお話ですから、最初は驚きましたが、同時にとても革新的で素晴らしい協業になると思いました。

現在、資材価格の高騰などの影響で、住宅の着工には慎重な姿勢が強まっています。YKK APは国の補助事業もあり、窓リフォーム需要に支えられてきましたが、これまで追い求めてきた「量の拡大」から、「質の実現」へと転換すべき局面に来ていると感じています。

我々が強みを持つ窓やサッシなど建物の「外」の商材は、住宅検討プロセスの最終段階に決められることが多いのが実情です。一方、キッチンやバス、インテリア建材など「内」の商材は住まいづくりの優先順位が高く、これら「内」の要素と当社の「外」の強みをさらに深く融合させ、新たな価値を創造することが必要と考えていました。そんな時に持ち上がったのがPHSとのお話です。

両社が組めば、「外」と「内」の総合的な建築資材・住宅設備事業の展開が可能になります。我々は今、高断熱窓の普及に努めていますが、住宅の省エネをさらに進めるため、住宅設備機器を組み合わせ、差別化提案につなげていきたい考えです。こうした領域でも、互いにないものを補完し合える最適なパートナーであると確信しております。

ステークホルダーから好意的な反応
社員は「可能性が広がった」と捉える

――YKKグループ入りが発表された後、ステークホルダーからはどのような反応がありましたか。

山田氏

業界で大きな話題になり、驚いた方も多かったようですが、サプライヤー、流通店の皆様からは、「ベストな組み合わせ」「これからが楽しみ」という非常に前向きな期待をいただきました。YKK APとPHSを合わせると事業規模は1兆円超になります。サプライヤーには「実力があれば、YKK APにも採用してもらえる」と事業拡大のチャンスと捉えていただいています。社員向けにはアンケートを取ったり、タウンミーティングを開催したりしていますが、責任者クラスの社員はほとんどが「良い話だと思う」「面白くなる」という反応でした。若い社員たちは当初、自身の勤務地や福利厚生などに対する不安があったようですが、今は仕事の領域を広げ、多様なキャリアを積めるチャンスと前向きに受けとめ、「早くYKK APの社員と交流したい」という声もあがっています。発表は2026年度の新入社員の内定式後でしたが、結果的には1人も抜けることなく全員入社しました。新入社員たちも業界のことをよく勉強していますから、YKKグループ入りで可能性が広がったと理解しているのだと思います。

魚津

当社の社員も非常に前向きに受けとめています。社内ポータルサイトで発表した時には、すぐに「いいね」の反応がたくさんつきました。また、流通店やビルダーからも好意的に捉えていただいています。

両社の商材を掛け合わせ
付加価値の高いソリューションを創出へ

――これから、どのようにシナジーを創出していきますか。

山田氏

まずは流通の仕組みをつくるなど、販売面での基盤構築を進めます。例えば、我々は「非住宅」の商材を開発しても、その拡販にはまだまだ課題があります。ビル市場においてカーテンウォールで高いシェアを有するYKK APと一緒に組むことで、トイレなどの水まわり設備やドアなど内装建材もさまざまな展開ができるようになります。

モノづくりに関しても、お互いが持つ商材を掛け合わせ、お客様の暮らしをより良くする付加価値の高いソリューションを生み出します。省エネや建築省力化、ヘルスケアといったさまざまな領域で両者の強みを生かし、Well-beingに貢献する価値を提供したい。これは商材が重複しない我々だからこそできる、競合企業には真似できない強みです。

海外については、特に中国事業は早期の成果を期待しています。不動産市況の影響により新築販売は厳しい状況ですが、リフォームは伸びています。内装をしていないスケルトン状態の住宅をフルリフォームする需要も多く、「日本メーカーの建材や水まわりを使いたい」というお客様向けに事業を拡大できる可能性が高い。中国国内に3つの生産拠点を構え、販売網も持つYKK APとの協業で、成果を出したいです。

多くのシナジー創出が期待できますが、事業規模を想定し、優先順位を決め、スピードを上げて取り組んでいきます。

魚津

販売については、既に海外のグループ会社から「PHSの商材を扱いたい」という声が数多く届いており、手応えを感じています。また、商品については、水まわり商材などもグループ内で取り扱えるようになることで、住まい全体をトータルで提案できるようになります。こうした提案領域の広がりは、今後の商品ブランド戦略を構築していく上でも大きな強みになり、楽しみです。

技術面では、既にYKK APは、PHDが開発中のペロブスカイト太陽電池を使った内窓による建材一体型太陽光発電の実装検証を開始しています。こうした最先端の技術交流を深めることで、山田社長がおっしゃるようなモノづくりを進められれば、多様な顧客層へのアプローチも強化できるでしょう。また、調達や物流を共同で行い、コスト面でもシナジーを生み出したい。さらには世界70カ国/地域に進出するYKKグループの拠点を活用するなど、グローバル展開での最適化も検討したいと思います。

――今後の抱負をお聞かせください。

山田氏

魚津社長のお話をお聞きして、改めて両社のめざす方向にズレがないと確認できました。ここからは取り組みのスピードを上げて前進するのみです。中東情勢の混乱をはじめとする地政学リスクなど、変化の激しい時代ですが、この戦略的パートナーシップによって、我々のレジリエンスも向上します。持続的成長が可能なスキームをつくることができたというこの“ワクワク感”を社員と共有し、新しい挑戦を楽しみながら進んでいきたいですね。

魚津

両社が持つ高い専門性と培ってきたノウハウをシナジー創出につなげ、組織全体を進化させていくとともに、この戦略的パートナーシップによって、社員一人ひとりがより前向きに変わっていくきっかけになると信じています。両社の強みを融合し、建築資材・住宅設備市場をけん引するリーディングカンパニーをめざしてまいります。