
役員座談会「YKK APの中長期戦略と持続的成長のためのビジョン」
「Architectural Productsで社会を幸せにする会社。」というパーパスのもと、YKK APでは社会課題解決に貢献する多くの商品・サービスの開発に取り組んでいます。これからも持続的に価値を提供し続けるために、どのようなビジョンと戦略を持っているのか、また、事業活動に影響を及ぼす可能性のあるリスクは何か、どう乗り越えるのか。YKK APの役員3名が語り合いました。ファシリテーターは執行役員 広報室長の河合知恵子です。

魚津 彰

岩渕 公祐

水上 修一

河合 知恵子
2020年以降の社会・経済情勢の変化で、事業継続の改善点が浮き彫りに
気候変動や高齢化、資源高など、さまざまなリスクが顕在化しています。この状況をどう捉えておられますか。
まず資材に関してですが、昨今の政情不安により、コスト高にとどまらず、資材そのものが入って来なくなる恐れがあると感じています。新しい素材に転換していく必要がありますが、これは一朝一夕にできることではありません。開発にいち早く着手することが開発・技術担当部門に求められていると受け止めています。YKK APは以前から住宅の脱炭素化に向けた樹脂窓の開発・普及を進めてきました。これを加速させる一方で、アルミに関しても軽量化や高強度化といった改良を進める。こうした技術力の向上が、変化に適応する体力をつけることになると考えています。
新素材の開発は、海外で事業を広げるうえでもぜひ進めていきたいものです。というのも、海外ではアジアを中心に人口増加が進み、従来の高級住宅ではなく中級住宅のニーズが増加すると見込まれています。そのニーズを取り込むには、どれだけ水面下で新しい商品や新しい事業をつくっておけるかが鍵となります。リスクに話を戻すと、日本国内では資源高に加えて人口の高齢化が進み、かつ物価上昇に伴う市場の冷え込みが予想されています。つまり当社が成長を続けるには顧客数が足りなくなるわけです。その分、ターゲットセグメントを変え、新しいチャネルを取り込まなくてはいけない。営業部門にとっては、この点がこれからの課題だと理解しています。
グローバル化とIT化が成長を続ける鍵
新しい素材、商品、セグメントへの挑戦が重要になりそうですね。
海外に関しては、エリアを広げることも、持続的成長を図るうえで不可欠です。
日本の住宅市場が縮小していくと見られる今、日本での生き残りと海外展開、両方をにらんだ開発が必要だと、私たちも考えています。
そのような新商品の開発やエリアの拡大をスピーディーに展開させるには、コンプライアンスや内部統制の基盤を固めておくことが不可欠です。管理部門は、各事業部門の情報をITでつなぎ、事業基盤を整備する取り組みを推進しています。海外での新事業を強化していくためにも、自然災害に見舞われたときのリスクマネジメントという目的でも、対応を急いでいるところです。
働き方改革と人材の多様化を加速させる
YKK APは、コロナ禍の早期にテレワークを導入できました。これはBCPとして本社機能を東京と黒部に分散させていたこと、また働き方改革としてテレワーク導入の準備を進めていたことが奏功したと言えます。管理部門としては、働き方改革の進捗をどうお考えでしょうか。
むしろ働き方改革はこれからだと考えています。特に製造と施工現場は、まだ改革が進んでいません。引き続き省人化を進めると同時に、5Gで機械を遠隔操作できるような技術を取り入れるといったスマートファクトリー化の研究を進めています。
YKKグループでは定年廃止に象徴されるように、人事制度改革をするばかりでなく、ダイバーシティも推進していますが、どうお考えですか。
開発部門でも、多くの女性社員が活躍しています。どの社員も優秀であることに変わりありませんが、感性や考え方は性別や年齢などでやはり少し違っています。私は、この多様性こそが開発に新しい視点をもたらす大切なものだと考えています。よく言われる結婚、出産、介護などのライフイベントだけでなく、さまざまな人生観や生き方もあります。社員それぞれのライフプランをどうサポートすればいいのか、今以上に検討を進める必要があるとも思っています。
海外では技術系の部署や工場でも、女性が管理者として活躍していますので、日本からもどんどん海外に出て活躍してほしいです。
YKKグループは、年齢、国籍、性別にかかわらず雇用をしていますので、女性や外国人を優先して採用することはありません。しかし、もっと女性の意見を現場や経営に反映させるには、現段階では母数を増やす必要がある。採用を含め対応を検討していきたいと思っています。
社員一人ひとりが視野を広げ、信頼度ナンバー1の会社になる
10年後、また20年後、YKK APがどのような会社であってほしいか、お考えをお聞かせください。
情報がすべてデータで一元化され、やりたいことを速やかに実現させる経営基盤の盤石な企業であってほしいですね。例えば、海外で事業を新たに立ち上げようという時。その国や地域ならではの制約やコストについての情報をスムーズに入手できれば、立ち上げのスピードだけでなく、展開力も格段に上がります。
今後、海外展開を加速させるにあたっては、日本でコアとなる技術を持ったうえで各国/地域のニーズをくみ取り、それに応じた商品を開発することが求められます。そのためにはデジタル技術と合わせて、人材の育成も不可欠です。
同感です。私自身は、開発・製造力を生かして商流を膨らませ、事業ドメインに窓やドア以外の住宅のパーツを加えていく必要もあると考えます。そのためにも、海外事業には積極的に人材を投入します。そして、会社全体の売上に占める海外の割合も引き上げていきたいです。
他部署を経験することも良いと思います。開発の人間なら、最初の1〜2年は営業や製造を経験する。営業の前線の人たちがどう苦労しているのか、お客様がどんな要望を持っているのかが分かります。
一人ひとりが事業全体を見渡せるようになることは大事ですね。
私は売上だけでなく、信頼度でナンバー1になることも重要だと思います。「YKK APに行けば何とかしてくれる」と思われる会社です。それには、全社員が「うちの会社ならこれができる」と答えられるようにならなくてはいけない。その意味で、今回はすごく良いパーパスができたと思っています。一人ひとりが「自分がどうしたら社会の幸せに貢献できるのか」と考えれば、絶対的に頼られる会社になるはずです。
この対談は2022年4月15日に行われました。
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